2023/03/25
外国人の永住許可申請の要件とは?原則10年在留に関する特例も紹介
在留資格「永住者」とは、もともとの国籍のまま、日本に住み続けられる外国人のことです。
すでに日本に滞在していて、現在の在留資格(ビザ)を変更しようとする外国人だけが申請可能な在留資格の一種であり、
2022年6月末現在で、84万5,693人が取得しています(注1)。
母国の国籍を残しつつ、日本に安定して滞在したい方にとって、最適な在留資格ですが、
取得要件についてご存じではない方も少なくありません。
そこで、本記事では、外国人の永住許可申請の要件について解説します。
永住許可申請の「原則10年在留」の特例についても解説するため、弊所へのご相談の前にぜひご参考にしていただけますと幸いです。
1.外国人の永住許可申請の要件とは?
出入国在留管理庁が永住許可に関するガイドラインで定めている外国人の永住許可申請の要件は、次の3つです(注2)。
◯素行が善良であること(素行善良要件)
◯独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)
◯その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(国益適合要件)
ここからは、それぞれの要件について解説します。
1.1素行が善良であること
素行が善良であるとは、日本の法律や法令に違反していないことです。
具体的には、窃盗や強盗、詐欺といった犯罪行為を犯して懲役・禁固・罰金に処せされたり、
駐車禁止違反や一時停止違反などの軽微な違反を繰り返したりしていない状態が、「素行が善良である」に該当します。
1.2独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
この要件は独立生計要件と呼ばれ、日常生活で公共の負担になっておらず、
保有する資産または技能から将来にわたって安定した生活が見込まれる状態を指します。
入管は明確な基準を公表していないものの、
共働きで扶養に入っていなければ、1人世帯で300万円でよいとされています。
また、独身者であれば、過去5年、年収300万円わずかに足りなくても許可されるケースがあります。
一方、申請者が主婦で働いていない場合では最低、被扶養者1人につき70万円が加算されるので
日本人配偶者300万円も加算されて370万円は世帯収入として最低限必要です。
1.3その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
この要件は、国益適合要件といい、永住許可を申請する外国人が、
日本に永住することで、日本にとってプラスかどうかで判定されます。
国益適合要件は、10年以上日本に在留する日本継続在留要件や公衆衛生上の問題がないことなど、4つの要件で構成されますが、
入管が近年とりわけ重要視しているのが、日本継続在留要件と公的義務の履行です。
前者の日本継続在留要件は、原則として、10年以上日本に在留し、
このうち就労資格を持って5年以上日本に在留し続けることを指します。
継続在留の要件は厳しく、1回の出国日数が90日以上、年間のトータル出国日数が150日以上を越えると、
継続在留がリセットされる点に注意が必要です。
一方、後者の公的義務の履行とは、住民税や国民健康保険税など、
税金を支払い遅れや未納をせず、きちんと払っているかどうかになります。
実務上、健康保険と年金については直近2年間、
住民税などの税金については、直近5年間の支払い遅れや未納がないかを入管によりチェックされます。
在留資格を持つ方のほとんどは、給与から各種税金が天引きされている労働者です。
このため、一見して公的義務の履行が問題視されるケースは少ないと考えられるかもしれません。
しかし、在留資格の方には、独力で税金を納める自営業の方もいます。
自営業の方は、納付期限をしっかり守られているかどうか、管理することが必要となるでしょう。
2.永住許可申請の「原則10年在留」に関する特例
永住許可を申請するためには、前述した日本継続在留要件を満たすことが必要不可欠です。
しかし、入管は、主に次の5つの要件いずれかを満たす場合に10年の在留がなくても、永住許可を申請できる特例を設けています。
◯日本人と永住者、特別永住者の配偶者である
◯在留資格「定住者」を有している
◯難民の認定を受けている
◯日本への貢献があったと認められる
◯高度人材外国人として日本に来た場合
ここからは、特例に合致する5つの要件について説明します。
2.1日本人と永住者、特別永住者の配偶者である
日本人と永住者、特別永住者の配偶者である場合、以下の2つの要件を満たすと、特例が適用されます。
◯実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留している
◯実子などの場合は、1年以上日本に継続して在留している
これらの要件を満たすと、永住許可申請に必要な素行善良要件と独立生計要件は不問となります。
なお、実子などについては、年齢制限はありません。
学校に通学したり、就労したりしている場合は、20歳以上でもこの特例が適用されます。
2.2在留資格「定住者」を有している
日系3世や中国残留邦人などに該当する在留資格「定住者」を保有したうえで、
継続して5年以上日本に在留すると、特例が適用されます。
また、日本人の配偶者等の在留資格を持っていた人が、在留資格変更許可を受けて定住者の在留資格を付与された場合でも、
日本の配偶者等の在留期間と合わせて5年以上であれば、特例の要件を満たすものとみなされます。
2.3難民の認定を受けている
武力紛争や人権侵害を避けるために他国に逃れる難民の認定を受けたうえで、継続して5年以上、日本に在留すると、特例が認められます。
2.4 日本への貢献があったと認められる
日本への貢献があったと認められたうえで、日本に5年以上在留すると、特例が認められます。
日本への貢献が何であるかは、入管の「我が国への貢献」に関するガイドラインで規定されています(注3)。一例は次の通りです。
◯国際機関もしくは外国政府またはこれらに準ずる機関から、
ノーベル賞やフィールズ賞など、国際社会で権威あるものとして評価されている賞を受けた者
◯外交使節団または領事機関の構成員として日本で勤務し、
日本とその者の派遣国との友好または文化交流の増進に功績があった者
◯日本の上場企業またはこれと同程度の規模を持つ国内企業の経営におおむね3年以上従事している者または
企業の経営におおむね3年従事したことがある者で、その間の活動により日本の経済または産業の発展に貢献のあった者
◯文学、美術、映画、音楽、演劇、演その他の文化・芸術分野で指導者または指導的地位にある者として、
おむね3年以上日本で活動し、日本の文化の向上に貢献のあった者
2.5高度人材外国人として日本に来た場合
経済成長やイノベーションへの貢献が期待される能力や資質に優れた高度人材外国人として日本に来て、
高度専門職省令で規定される一定のポイントを上回った場合、特例が適用されます。
具体的には、70点以上を満たす場合、3年以上継続して日本に在留している場合に、永住許可の申請が可能です。
また、80点以上を満たす場合には、永住許可の申請に必要な在留期間が1年以上に短縮されます。
3.まとめ
外国人の永住許可申請の要件は、素行善良要件と独立生計要件、国益適合要件の3つです。
これらの3つの要件を満たす外国の方は、法務大臣の許可を経て在留資格「永住者」を取得しやすいとされています。
ただし、日本人と永住者、特別永住者の配偶者だったり、在留資格「定住者」を保有したりしている場合は、
特例が適用され、10年以上の在留がなくても、永住許可の申請が可能です。
永住者取得についての最終的な許可・不許可の判断は、法務大臣の自由裁量で決められ、明確な基準はないといわれますが、
永住者の取得を目指す方は本記事で紹介した要件を遵守するとよいでしょう。
行政書士法人KIS名古屋事務所は、外国人の永住許可申請についてご相談に対応可能です。
豊富なノウハウや経験、実績で、永住許可申請に関するお悩みを解決するお手伝いをさせていただければと思います。
ご不明点やお困りごとがございましたら、弊所まで遠慮なくご相談ください。
注1 出入国在留管理庁「令和4年6月末現在における在留外国人数について」
注2 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和元年5月31日改訂)」
注3 出入国在留管理庁「「我が国への貢献」に関するガイドライン」
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