外国人と共に働くために雇用される側と経営者に必要な知識とは?
季節の変わり目の寒暖差も落ち着いてきて、新型コロナ感染症も規模が縮小し緩和されてきたおかげで、色々な意味でとても過ごしやすくなってきましたね。
このように行き来しやすくなると、日本にお仕事や旅行、プライベートで滞在される外国人の方も、今後ますます多くなることでしょう。
これから日本に入国される方や滞在される外国人の皆さんに知っておいて欲しいことが、退去強制事由と退去強制手続きです。
知らないで不法滞在(法律に違反し滞在し続けること)してしまう等の強制退去の理由に当てはまってしまった場合、自国に強制送還されてしまいます。
また、外国人を採用する予定や現在採用中の日本の経営者やオーナーの方にも必見です。
もしその人が不法入国者だった場合、経営者やオーナーにも罰金などの罰則が科されてしまいます。
正しい手続きで外国人を雇うためにも、どんな人がその対象になるのか、不法入国の場合どんな厳しい手続きが取られるのか、オーナーや経営者側にはどんなペナルティーがあるのかをきちんと知っておく必要があります。
これらの制度には、例えば不法入国する人やパスポートの在留許可の期間が切れているのに滞在している外国人を強制的に国外に退去させることができるというルールが示されています(入国管理法第24条)。
入国管理法(入管法)とは、正式名称を「出入国管理及び難民認定法」と言います。
入管法は、日本における全ての日本人と外国人の出入国の管理、全ての外国人の在留管理、難民の認定手続きを整備することを目的に作られた法律です。
それでは、はじめに強制退去させられる理由である退去強制事由について紹介します。
1.退去強制事由とは
外国人が日本から退去しなくてはならない理由を、退去強制事由と言います。
入国管理法第24条に規定されている退去強制事由の代表例を9項目挙げておきます。
1)不法入国 パスポートを持たずに入国した人(入管法第24条1号)
2)不法上陸 パスポートは持っているが、密入国した人(入管法第24条2号)
3)不法滞在 在留期間を過ぎている人(入管法第24条2号の3)
4)在留資格取り消し 何らかの理由で在留資格を取り消された人(入管法第24条2号の2)
5)不法入国や不法上陸を手助けした人(入管法第24条3号の4)
6)売春やその斡旋などの業務をした人(入管法第24条4号のヌ)
7)刑事罰を科された人 無期又は1年以上の懲役や禁錮に処せられた人(執行猶予は含まない)(入管法第24条4号のリ)
8)麻薬・大麻取締法、あへん法、向精神薬取締法に違反した人(入管法第24条4号のチ)
9)偽造・変造文書を作り、提供した人(入管法第24条3号)
退去強制事由に該当する容疑がある人だとみなされ、調査→審査→審理→裁決の結果、日本での在留が認められないと退去強制手続きか出国命令手続きが開始されます。
出国命令制度は、入管法違反者の中で一定の条件を満たせば、身柄を拘束されずに簡単な手続きで出国できる制度になります。入管法の第24条の3に規定されていますが、ほとんどが不法残留者に当てはまります。
詳しい要件は以下リンクをご確認ください。出国命令制度について | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
2.退去強制手続き
退去強制処分は入管の摘発などにより発覚し、入管に身柄を拘束され、その後、強制送還となり以後5年間は日本への入国が認められません。
もし過去にも退去強制処分を受けた場合には、10年間と期間が延長されます。
10年も長期に渡り、日本に来られなくなるという時点で、かなり厳しい法律であることがご理解いただけると思います。
それでは、退去強制手続きと国外退去までの流れについて見ていきましょう。
①退去強制手続きとは
入国警備官が違反調査を行い、ルール違反とみなされた場合、48時間以内に入国審査官に身柄を引き渡します。
そして、入国審査官が違反審査退去強制事由と判断すると、退去強制令書が発布されて強制送還されることになります。
口頭審理、法務大臣による裁決の2回まで異議申し立てができ、三審制になります。
違反審査→口頭審査→法務大臣の裁決
②在留特別許可とは(入管法第50条)
法務大臣の裁決の際、在留特別許可の条件に当てはまると認められた場合には、日本に留まることが可能になります。
例えば、永住権があった、過去に日本国籍を有していた等が含まれます。
在留特別許可の条件は、プラスの要素とマイナスの要素をそれぞれ評価し、プラスの要素の方が多いと認められた際に認可が下りることになります。
詳しくは出入国在留管理庁のホームページに掲載されている「在留特別許可に係るガイドライン」「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例」をご覧ください。
在留特別許可関係 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
3.オーナーや経営者への罰則
オーナーや経営者が外国人労働者を雇用する際に、必ず知っておいて欲しいのが不法就労助長罪と営利目的在留資格等不正取得助長罪です。
①不法就労助長罪とは(入管法第73条の2)
日本で働く許可が取れていない外国人を雇ったり、不老就労を斡旋したとみなされた場合に、不法就労助長罪がオーナーや経営者等の事業主に適用されます。
不法就労助長罪に問われると、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科が課されます。
②営利目的在留資格不正取得助長罪とは(入管法第70条・入管法第74条の6)
外国人からお金を受け取る等、虚偽の情報や不正な手段で日本上陸や在留期間を延長できるように手助けをした場合に適用されます。
フィリピンパブや中国人スナック等の夜の仕事に多く、店ごと摘発される例も少なくありません。
こちらも不法就労助長罪と同じく、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科が課されます。
外国人を雇用する際に気を付けて欲しいことは、まず在留カードの内容を確認して、本人確認、在留期限、就労可能なのかをチェックしてください。
時々、在留カードが偽造のものでも分からなかった事例があります。
正規のものか、偽造か分からない時は私共行政書士や出入国在留管理庁までご相談ください。
備えあれば憂いなしです。
在留カードや在留資格をよく確認し、法律違反することなく外国人に働いてもらうことがオーナーや経営者を守る道なのです。
4.まとめ
今回のコラムを最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
退去強制事由と退去強制手続き、オーナーや経営者に対する罰則について、ご理解いただけましたか?
外国人を雇用する場合には、きちんとチェック項目を守り雇用することが大切です。
それでもこちら側に過失がなく予期せぬところで退去強制事由に当てはまってしまった場合であっても、それに正しく対処する必要があります。
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